2017/08/08

45 夏休み定番の宿題、朝顔の観察

 
  夏休みに入ったその日、植木鉢を抱えて下校してくる一年生。
そう、朝顔の観察、夏休みの宿題だ。
もう20数年前になるが、我が家の子どもたちもそうだった。
未だに続いているらしい。



▼ 息子の訴え「朝顔の観察は面白くない!」
 
  朝顔の観察は、自由研究というわけではなく、学校の授業で観察していたその続きを家でやるという宿題である。息子の場合は、毎日花がいくつ咲いたかを記録すること、夏休みが終わった時点でいくつ種ができているかを調べること、という課題が出ていた。

 ところが、息子は観察するどころか、持ち帰った朝顔に水もやり忘れるという始末。彼の関心は、朝顔の鉢をおいている庭に行列をつくっているアリの方へと向かい、途中にじゃま物を置くとどう動くか、砂糖をおくとどうか、えさになるような虫を置くとどうなるのかと、いつまでも這いつくばっていた。「だって朝顔の観察は面白くない! アリの方が面白いんだもん」というのが彼の言い分であった。

学校における授業は、いつも教科書に書いてあることの確認だ。低学年の指導にかけては定評があるという担任の教師は、息子の観察ノートに、最初に植えた朝顔の種については、大きくしっかりと描くように、また葉の形や裏に生えている細かい毛、つるの巻き方をもっと正確に描くようにと、そのつどダメ出し。絵の苦手な息子は朝顔の観察に辟易としていた。
 それに続く夏休みの朝顔の観察。息子の気持ちももっともだと納得してしまった私であった。



▼朝顔の観察、なぜ1年生の課題なのか

さて、朝顔の観察は未だに親子の悩みであるようだ。
 ネット上では、朝顔の観察の苦労や、うまく「やっつける方法」、失敗して枯らしてしまった時のレポートの書き方などのアイディアなど、保護者からの情報が満載である。親子で苦労している様子が見てとれる。

1カ月以上の長きにわたる夏休み、その間、朝顔を枯らさずに世話をするだけでも、結構大変な作業だ。小さな鉢植えなど、この暑さでは朝の水まきだけでは涸れ枯れになってしまう。その世話ばかりか、観察も加えて1年生に宿題として出すという意味は、どこにあるのだろうか。

文科省は
・土作りから種まき、発芽、開花、種とり、水かけや支柱立て、様々な色の花、観察記録
など、変化と継続性が楽しめるため、児童は毎日親しみと期待をもって世話を続けていく
・中でも、『発芽』『開花』『種とり』は大きな楽しみであり、児童の喜びや感動も大きい

としている。
 
 しかし実際問題、子どもと親が宿題として出された朝顔の観察に四苦八苦しているという多くの事実がある。動物と違って、植物は子どもが世話している行動に対してその場で反応するわけではないので、愛情を感じにくいというのが本当のところではないのか。

植物の成長には時間がかかる。芽が出る、茎が伸びる、本葉が出る、ツルがのびる、それぞれの段階に到達するまでに1カ月、2か月、そして種がとれる最終段階に至るまでには5か月ほどかかる。その間を、どのようにして1年生が興味を持って朝顔の世話をし、朝顔の観察を楽しませられるか。
その工夫がしっかりとなされないと、せっかくの朝顔の学習が、子どもにとって重荷になってしまうだろう。
 
 
▼子どもに観察・探究を楽しませるために
子ども(大人でも同じだが)が観察や探究の世界に入るには、ワクワク感が必要だと思う。
単に観察行動を経験するための観察、教科書にある内容を確認するための観察では面白くない。かえって観察の世界から遠ざけてしまうことになる。
最も重要なことは、「観察って面白い」と思わせることだ。何か変化が少し見えてきた、でもまだわからないことがある、「もっと知りたいな」という気持ちにさせる。
決まったことをきちんとやるとか、わかっていることを確認するとかではなく、必要なのは、まず知りたいと思うことを育てること、調べてみたいと思う気持ちを育てることではないだろうか。
 
教師や教科書をつくる人は、自分で朝顔を観察したことがあるだろうか。
子どもに観察させるのではなく、自分で自分の朝顔を観察したことがあるだろうか。
自分でずっと観察していて、どういうときにワクワクした気持ちを感じるか、何を知りたいと思うか、どういうときにつまらなくなるか、育てる人たちにはぜひそれを体験し、研究してほしい。
それは私自身の体験からの思いである。息子がほおり出した朝顔の観察、息子の気持ちは認めたものの、せっかく持ち帰った一鉢の朝顔、この観察をなんとか面白くできないものだろうかと、私は自分で観察を始めてみることにしたのである。
 
すると、どうだ。面白くないどころか、これが実に面白いのだ。
こんなに面白くてワクワクするのは久しぶりというぐらい、私は朝顔の観察にはまってしまった。その次の年も、またその次の年も、と観察を続けた。20年以上も前の事だが、今でも楽しい思い出として残っている。
その結果から、朝顔の観察をワクワクしながらやるためには、いくつかのポイントがあるということがわかった。
 
それについては、次の稿で。